夢の話から、一段深い「現実の話」へ
第①回・第②回では、
社会人がパイロットを目指す全体像と、はじめの2年間の重要性をお伝えしてきました。
第③回は、いよいよ核心です。
ここでは
「実際に操縦席に座るために、何が求められるのか」
を整理します。
事業用操縦士、計器飛行証明、訓練内容 ―
そして、航空身体検査と航空無線通信士資格についても、正面から触れます。
現実を知ることは、諦める理由ではなく“準備する力”になります。
事業用操縦士・計器飛行証明とは
日本で「プロのパイロット」として飛ぶためには、
段階的に資格を積み上げていく必要があります。
簡略化すると、流れは以下の通りです。
- 自家用操縦士(PPL)
- 事業用操縦士(CPL)
- 計器飛行証明(IR)
- 航空会社が求める最終要件(型式限定・飛行経験など)
この中で、
CPL+IRは “職業として飛ぶための最低ライン”
と考えて差し支えありません。
特に計器飛行証明は、
- 視界不良
- 雲中
- 悪天候
といった状況でも、安全に飛行を継続するための能力を証明するものです。
実際の運航では、
「見えるから飛べる」ではなく、「見えなくても飛べる」
ことが強く求められます。

訓練で本当に問われる4つの力
① 操縦技術
これは前提条件です。
- 正確な操作
- 安定した飛行
- 規定値を守る意識
ただし、
技術だけで評価される世界ではありません。
② 判断力
訓練が進むにつれ、常に問われるのが
「なぜ、その判断をしたのか?」
という問いです。
- 続行か中止か
- 高度・進路の選択
- 天候判断
社会人経験で培った
論理的思考やリスク評価能力は、ここで確実に活きます。
③ コミュニケーション能力(CRM)
パイロットは孤独な仕事ではありません。
- 管制官
- 教官
- 2マン機の場合は他パイロット
- 地上スタッフ
との連携が不可欠です。
その中心にあるのが、無線による正確な意思疎通です。
この点で後述する
航空無線通信士資格は、単なる試験ではなく
「航空の言語を学ぶ第一歩」と言えます。
④ 精神的な安定
訓練中、誰もが一度は思います。
「向いていないのではないか」
ミスが続く日もあります。
評価が伸びない時期もあります。
ここで重要なのは、
感情と行動を切り離せる力です。
社会人として仕事をしてきた人ほど、
この点で強さを発揮することが少なくありません。

訓練を始める前に、必ず確認すべき2つの条件
ここからが、
本気でプロを目指す人にとって最重要のパートです。
① 第一種航空身体検査証明という“最初の関門”
日本でプロパイロットになるには、
第一種航空身体検査証明の取得が必須です。
航空医学研究センター
https://www.aeromedical.or.jp/check/seido/index.htm
これは単なる健康診断ではありません。
- 視力・色覚
- 聴力
- 心電図
- 内科的・精神的適性
などを総合的に評価されます。
重要なのは、
訓練を始める前に確認しておくことです。
理由は明確です。
身体検査に通らなければ、
どれだけ訓練を積んでもプロにはなれないから。
社会人の場合、
- 年齢
- 生活習慣
- 過去の既往歴
が影響するケースもあります。
だからこそ、
「やってみてから考える」では遅いのです。
② 航空無線通信士資格は“早めに取る”
航空機の訓練では、
無線交信が日常的に行われます。
そのため、日本では
航空無線通信士資格を訓練開始前、または初期段階で取得すること
が実質的に求められます。
この資格は、
- 操縦のための無線知識
- 用語
- 運用ルール
を学ぶもので、
計器訓練との相性が非常に高い資格です。
早めに取得しておくことで、
- 訓練への理解が深まる
- 無線への苦手意識が減る
- 教官とのやり取りがスムーズになる
といった明確なメリットがあります。
社会人だからこそ、この段階で活きる強み
ここまで読むと、
「ハードルが高い」と感じたかもしれません。
ですが、社会人には明確な強みがあります。
- 失敗を分析し、改善できる
- 指示を理解し、再現できる
- 長期的な目標を逆算できる
航空訓練は、
努力が成果に反映されやすい世界です。
若さよりも、
「学び方」と「向き合い方」が問われます。
辞めたくなる瞬間は、誰にでも来る
事業用・計器訓練の途中で、
- 思うように伸びない
- 周囲と比較して落ち込む
- 将来が不安になる
こうした感情は、ごく自然です。
大切なのは、
一時的な感情で進路を決めないこと。
多くの現役パイロットも、
この段階で一度は立ち止まっています。

まとめ|現実を知る人ほど、前に進める
第③回でお伝えしたのは、
- 事業用・計器訓練の実態
- 求められる能力
- 第一種航空身体検査と航空無線通信士の早期取得
です。
これは夢を現実に変えるための地図です。
次回(第④回)は
- 有資格者としての立ち位置
- 航空会社・進路の選び方
- 社会人からプロになるための最終判断
を扱います。
Beyond the Horizonは、
パイロット、CA、総合職など
“空の現場を知る仲間たち”の視点で、
正しい情報とエールを届け続けます。
