航空業界で何が起きているのか|若者が「空の仕事」を選ばなくなった理由と、現場の実際

alt="空港エプロンに駐機するANAの旅客機。機材更新の遅れが航空会社の運航現場に与える影響を示す風景" 航空業界

航空業界への志願状況に、静かな変化が起きています。

新型コロナウイルス禍が収束し、
空港や機内には再び人の流れが戻ってきました。

インバウンド(訪日外国人客)も過去最多を更新し、
「空」は、確実に動き始めています。

それにもかかわらず、
航空業界を目指す若者は戻ってきていません。

とくに、
航空整備士やグランドハンドリングなど、
飛行機を飛ばすために欠かせない仕事で、
志願者の減少が続いています。

これは一時的な人気の問題ではなく、
日本の移動・観光・ビジネスを支える構造の話です。

この記事では、
ニュースで語られた事実を整理しながら、
現場の実感を交えて、
今、航空業界で何が起きているのかを読み解いていきます。


航空専門学校で起きている現実

航空整備士やCA(客室乗務員)を養成する
中日本航空専門学校では、
今年度の入学者数が 定員274人に対し172人 にとどまりました。

コロナ禍前は300人前後で推移していた志願者が、
100人以上減少しています。

旅客数の回復により、
航空会社の採用数そのものは増えています。

それでも、
整備士を中心に志願者は回復していません。

背景には、

・コロナ禍で航空機が飛ばなかった記憶
・航空業界は不安定だという印象
・少子化と人材獲得競争の激化

といった要因が重なっています。

教育現場からは、
「航空業界が不安定な業種に見えるようになった」
という率直な声も聞かれます。


職種によって分かれる「人気の二極化」

ここで、重要な事実があります。

航空業界全体で志願者が減っているわけではありません。

CAの志願者は、
むしろ回復・増加しています。

一方で、

・航空整備士
・グランドハンドリング
(航空機誘導、手荷物搭載、地上支援業務)

といった職種では、
在籍者数が 10年前の3分の2 にまで減少した例もあります。

これは、
仕事の価値の差ではありません。

仕事の「見え方」の差です。

CAは航空業界の象徴的な存在であり、
若者が最初に思い浮かべる
「空の仕事」でもあります。

一方、整備や地上業務は、
日常的に目にする機会が多い仕事ではありません。

しかし、現場でははっきりと共有されています。

整備士や地上業務がいなければ、
飛行機は一便も出発できません。


国が危機感を持つ理由

国土交通省のデータを見ると、
状況はより明確になります。

国内の航空整備士は、約6,000人。

政府が掲げる
インバウンド6,000万人時代を支えるには、
約2割(1,400人)の増員が必要とされています。

しかし、
整備士を養成する全国8校の入学者数は、
この5年間で ほぼ半減しました。

操縦士も同様です。

バブル期に採用された世代が、
2030年前後に大量退職を迎える見込みで、
今後の人員確保は簡単ではありません。

こうした背景から、国はすでに、

・養成期間の短い運航整備士の業務範囲拡大
・元自衛官や外国人材の活用
・シニア人材の再活用
・女性パイロットの拡大

といった対策に動いています。

それほどまでに、
運航を維持すること自体が重要な課題になっています。


現場から見た、航空業界の実際

航空業界は、
コロナ禍で大きな影響を受けました。

進路を断念した人、
一度は夢を手放した人も少なくありません。

その記憶が、
今の10代・20代の進路判断に
影響しているのは自然なことです。

一方で、現場では次のような変化もあります。

・安全基準は年々高度化し、専門性は高まっている
・自動化が進んでも、人の判断が不可欠な領域は多い
・インバウンド増加により、仕事が消える可能性は低い

派手さはありません。

ですが、
社会にとって不可欠な仕事であることは変わりません。

航空業界は、
憧れだけで成り立っているのではなく、
日々の積み重ねと責任によって支えられています。


若者が航空業界を考えるときに知っておいてほしいこと

この問題は、
「航空業界に進むべきかどうか」を
迫るものではありません。

大切なのは、

・なぜ人が足りなくなっているのか
・どんな仕事が、社会を静かに支えているのか
・自分は、どんな役割に価値を感じるのか

を知ることです。

目立つ仕事だけが、
価値を持つわけではありません。

見えにくい仕事ほど、
社会は強く依存しています。


それでも、空は飛び続けています

2024年、
訪日外国人客数は過去最多を記録しました。

2025年以降も、
その流れは続くと見られています。

空は止まりません。

だからこそ今、
誰が、どのように、その空を支えているのか。

その構造を知ることは、
将来を考えるうえでの
大切な材料になります。

この問題は、
航空業界だけの話ではありません。

どんな仕事が社会を動かしているのか。
その仕事を、誰が担っているのか。

それを考える入口として、
この記事が役に立てば幸いです。

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