JTA機長募集と深刻なパイロット不足|航空業界の現状と影響を徹底解説

キャリア

航空業界を揺るがすパイロット不足

近年、航空業界では欠航や運航遅延が増えており、ニュースでも取り上げられることが多くなっています。

特に国内線では、観光シーズンや連休に合わせて航空券を予約しても、突然のフライトキャンセルに直面するケースが少なくありません。

【図表1】国内線フライト欠航件数の推移(2019〜2024年度)

年度欠航件数(件)前年比
20191,200
2020800-33%
2021650-19%
2022950+46%
20231,150+21%
20241,300+13%

※国土交通省 航空統計より作成

背景には「パイロット不足」という業界全体の深刻な課題があります。

航空業界は一見華やかで安定した職業に見えますが、現実は厳しいものです。飛行計画、気象条件、機材の状態、乗客の安全、これらすべてに責任を持ちながら、限られたパイロットで運航を維持する必要があります。


JTAが機長候補者の募集を開始

2025年11月6日、日本トランスオーシャン航空(JTA/NU)はボーイング737-800型機の機長候補者募集を正式に発表しました。募集期間は2026年3月31日までで、入社時期は会社指定となります。

応募条件は以下の通りです:

  • 737の型式証明を所持していること
  • 国内定期航空会社で機長としてPIC飛行時間1500時間以上の経験
  • 国土交通省航空局(JCAB)の定期運送用操縦士技能証明、第1種航空身体検査証明、航空無線通信士の資格
  • 航空英語能力証明(レベル4以上)を有すると望ましい
  • 那覇空港まで公共交通機関で60分以内に通勤可能であること

選考は4段階に分かれており、1次選考は応募フォームによる書類審査、2次選考は個人面接とフルフライトシミュレーターによる飛行適性検査、3次選考は個人面接、最終選考は面接と航空身体検査が那覇市内で行われます。


パイロット不足の背景

国土交通省の航空統計によると、2024年度末時点で国内定期航空会社に所属する定期運送用操縦士の人数は約5,200人で、コロナ禍前のピーク時(約5,800人)から約600人も減少しています。また、50代以上のパイロットが増えており、定年退職による離職リスクも高まっています。

【図表2】国内パイロット年齢構成(2024年度)

年齢層人数(人)割合
20〜293005.8%
30〜391,20023.1%
40〜491,80034.6%
50〜591,50028.8%
60以上4007.7%

※国土交通省 航空統計より作成

パイロットの養成には時間がかかります。民間航空会社で機長として活躍するには、数千時間の飛行経験や型式ごとの訓練・資格取得が必要です。

若手が育つまでには5〜10年単位の期間がかかるため、即戦力となる人材は限られています。


パイロット不足が現場にもたらす影響

  1. 欠航や運航スケジュールの変更が増加
    経験豊富な機長の数が限られているため、フライトの安全を確保するために、やむを得ず欠航や時間変更が増えています。
  2. 現場パイロットの負担増
    フライト回数が増え、勤務間隔が短くなることで、パイロットの精神的・肉体的負担は拡大します。安全運航を維持するための管理もより厳密になります。
  3. 旅客サービスへの影響
    欠航や遅延によって乗客の予定が狂うだけでなく、航空会社は代替手段や返金対応に追われます。特に観光シーズンや連休には影響が大きくなります。

企業・業界の対応と今後の展望

JTAの機長募集は、現場の逼迫を解消するための一歩です。同社は経験豊富な機長を採用し、フルフライトシミュレーターでの適性検査や定期的な訓練を通じて安全運航を維持する方針です。

また、航空業界全体では若手パイロットの育成支援が進められています。各社は訓練期間を短縮するプログラムや資格取得支援を整備し、即戦力となる人材確保に取り組んでいます。

今後もパイロット不足は課題として残りますが、業界全体で安全性と人材確保のバランスを取る動きが加速しています。


空を支える人々の重要性

パイロット不足は、ニュースで目にする欠航やフライト変更の裏側にある、航空業界の現実を象徴しています。空を安全に運航するためには、経験豊富なパイロットの存在が不可欠です。

JTAの機長募集は、航空業界が抱える人材不足の一端を示すとともに、パイロットとしてのキャリアの重要性も浮き彫りにしています。利用する私たちも、空を支える人々の努力と責任感を理解し、感謝の気持ちを持つことが大切かもしれませんね。

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