2025年、航空業界ではコロナ禍からの回復による需要の増加に伴い、人材不足と航空機の供給遅延という2つの大きな課題が浮上しています。
特に空港グランドスタッフ、整備士、操縦士などの専門職の人材不足は、業界全体の大きな問題となっています。
また、新機材の納入遅延による運航計画への影響も深刻です。
人材不足の背景
コロナ禍による業績悪化で、多くの航空会社がリストラや採用抑制を行った結果、人材が流出。その後の急速な需要回復に、十分な人員確保が追いついていない現状があります。
また、労働環境の厳しさや賃金面の問題から、空港地上支援業務（グランドハンドリング）や整備士、パイロットといった職種での採用が難航しています。
航空各社の人材確保の取り組み
1. 労働環境の改善
国土交通省は、空港グランドスタッフや整備士の離職防止と新規人材確保のために、福利厚生の充実や空港周辺の住居確保といった労働環境の改善策を推進しています。
2. 外国人労働者の受け入れ
航空業界では特定技能制度を活用し、外国人労働者の受け入れを進めています。多様な人材の確保により、人手不足の緩和とサービスの多様化を目指しています。
3. 航空整備士・パイロットの人材育成
国土交通省は「航空整備士・操縦士の人材確保・活用に関する検討会」を設置。整備士やパイロットの新規採用・育成に向けた施策を官民一体で検討しています。
4. 定年延長によるベテラン人材の活用
航空操縦士の定年を65歳未満から68歳未満に引き上げ、経験豊富なベテランパイロットの知識・スキルを引き続き活用する方針が打ち出されています。
60歳を超えると身体検査には付加検査がありますが、クリアできれば、現状は68歳の誕生日前日まで乗務が可能です。
航空機供給遅延による影響
世界的に航空機メーカー（ボーイングやエアバスなど）が部品供給不足や製造工程の遅れに直面しており、多くの航空会社が新機材の納入遅延に苦しんでいます。
航空各社への影響例
- ANA（全日本空輸）：エアバスA321neoやボーイング787の納入遅延が影響し、一部の新規就航や路線増便計画の見直しを実施。
- JAL（日本航空）：ボーイング767型機の後継機として予定していた787の受領が遅れ、中距離国際線の強化計画に支障。加えて、ボーイング737 MAXやエアバスA321XLR（A321neoの長距離型）の導入も控えているが、供給スケジュールに遅れが生じています。
- スカイマーク：ボーイング737 MAXを中心に新機材導入を予定しているが、納入の遅れにより既存機材の延命措置を検討中。
- Peach Aviation：A320neoの納入遅延により、一部の増便計画を見直し、柔軟なダイヤ対応を実施中。
対策として
各社は既存機材の運用延長やリース機材の導入、さらには中古機材の活用など、柔軟な対応策を講じていますが、慢性的な機材不足が当面続く見通しです。
訪日外国人・日本経済への影響
人材不足や航空機供給遅延の影響により、インバウンド需要の高まりに対応しきれないケースも増加しています。
特に繁忙期にはフライト数の制限が生じ、観光地や地域経済への波及効果が限定的になる懸念も出ています。
日本政府が掲げる「2025年に訪日外国人旅行者数6,000万人」の目標にも影響を及ぼす可能性があり、航空輸送キャパシティの強化は喫緊の課題です。
航空便数の不足は、宿泊、交通、飲食業など周辺産業にも大きなインパクトを与えるため、経済回復の足かせにもなりかねません。
これから航空業界を目指す方へ
航空業界は、確かに現在多くの課題を抱えていますが、その一方で今後ますます重要性が増す成長分野でもあります。
安全運航を支える整備士、世界を結ぶパイロット、サービスの最前線で活躍する客室乗務員やグランドスタッフなど、多様な役割で人材が求められています。
厳しい現状だからこそ、次世代の航空人材には新しい発想と柔軟な対応力が期待されています。「空の仕事に挑戦したい」という方は、今こそ学びと準備の好機です。
これから航空業界を目指す方はこれまでにないチャンスです！
自分の得意分野や興味を見つけ、積極的にスキルアップを目指してください。
