この2年間は「才能」ではなく「向き合い方」が問われる
第1回でお伝えした通り、
社会人からパイロットを目指すことは、決して夢物語ではありません。
ただし、ここで一つだけ、はっきり言っておきたいことがあります。
最初の2年間は、最も地味で、最も心が揺れる時間です。
操縦席に座る自分を想像していたはずなのに、
現実は机に向かい、各種教材を読みあさり、
うまくいかない訓練に落ち込む日々が続きます。
この2年間をどう過ごすかで、
その後の道がほぼ決まる ―
それが、航空の世界の正直な現実です。
「思っていたのと違う」と感じる瞬間は、必ず来る
社会人から挑戦する人の多くが、
最初の数か月でこう感じます。
「想像していたより、ずっと大変だ」
「華やかな世界とは、ほど遠い」
「本当にこの選択でよかったのだろうか」
これは異常でも、弱さでもありません。
ほぼ全員が通る道です。
なぜなら、
この時期はまだ「成果」が見えないからです。
- 飛べる時間は限られている
- できないことの方が圧倒的に多い
- 比較対象は、いつも自分より上
社会人として、
「ある程度できる側」で生きてきた人ほど、
このギャップは強く感じます。

はじめの2年間で本当にやっていること
誤解されがちですが、
この時期にやっているのは「操縦」だけではありません。
むしろ多くの時間を占めるのは、
- 基礎理論の理解
- 手順の暗記
- 判断の根拠を言語化する訓練
- 自分のミスと向き合う作業
つまり、
“飛ぶ前の頭を作る時間”です。
この段階で重要なのは、
反射的なうまさではなく、
- なぜそう判断したのか
- なぜ失敗したのか
- 次はどう修正するのか
を説明できる力です。
これは、
社会人経験がある人ほど伸ばしやすい部分でもあります。
辞めたくなる時期は、ほぼ決まっている
正直に書きます。
社会人からパイロットを目指した人が、
一番心が折れやすいのは「最初の失敗」ではありません。
- 少し慣れてきた頃
- 周囲との差が見え始めた頃
- 「自分は平均なのかもしれない」と思った瞬間
このあたりで、
気持ちが大きく揺れます。
そして、こんな考えが頭をよぎります。
「このまま続けて、意味があるのだろうか」
「元の仕事に戻る方が、賢い選択では?」
ここで大切なのは、
“辞めたい気持ちが出ること”を否定しないことです。
問題なのは、
その感情にどう向き合うか、だけです。

進む人と、立ち止まる人の違い
この2年間で、
結果的に先へ進む人には、ある共通点があります。
それは、
「うまくやろうとしすぎない」こと。
完璧を目指す人ほど、
自分を追い込み、疲弊します。
一方で、
- 小さな改善を積み重ねる
- 周囲に頼ることを恐れない
- 「今日はこれで十分」と区切れる
こうした人は、
静かに、確実に前へ進みます。
これは、
仕事を通じて失敗や修正を経験してきた
社会人だからこそ身につく感覚でもあります。
「遠回り」に見える時間こそ、後で効いてくる
この2年間は、
成果が見えにくく、不安になりやすい時期です。
ですが、
ここで身につけた考え方や姿勢は、
後になって確実に効いてきます。
- 判断を急がない癖
- チームの中での立ち位置
- 自分の限界を把握する力
これらはすべて、
実際に操縦席に座ったとき、
そしてプロとして働く段階で、
大きな支えになります。
この時期に、答えを出さなくていい
最後に、
これだけは伝えさせてください。
はじめの2年間で、
「向いているか・向いていないか」を
無理に結論づける必要はありません。
大切なのは、
- 正しい情報を持つこと
- 自分の状態を冷静に見ること
- 一人で抱え込まないこと
この積み重ねです。
この連載は、
あなたが判断するための材料を、
順番に並べていくためのものです。
社会人からパイロットになる方法|連載ナビ
▶ 第1回:ゼロから空の世界へ飛び立つには?
▶ 第2回:はじめの2年間で、すべてが決まる(この記事)
▶ 第3回:資格取得と訓練のリアル
▶ 第4回:有資格者からプロになるまで
次回予告
次回は、
資格取得・訓練・英語といった、
より具体的で現実的な話に入ります。
数字や制度の話も避けません。
でも、希望も一緒に描きます。